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薬剤性過敏症:薬剤性過敏症症候群における単一細胞のトランスクリプトーム解析から導き出された標的化療法(症例報告)
Nature Medicine 26, 2 doi: 10.1038/s41591-019-0733-7
薬剤性過敏症症候群/好酸球増加症および全身症状を伴う薬疹(DiHS/DRESS)は、致命的になり得る多臓器系炎症性疾患であり、ヘルペスウイルスの再活性化やその後に発症する自己免疫疾患と関連している。病態生理学的解明は進んでおらず、治療選択肢も限られている。コルチコステロイド療法に抵抗性の症例は臨床的に扱いが難しく、DiHS/DRESS患者の約30%が感染や炎症、自己免疫疾患などの合併症を発症する。単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)技術の進歩により、ヒト疾患の病態生理学的性質をかつてなかった分解能で解明できるようになり、これはDiHS/DRESSのような動物モデルのない疾患にとって特に朗報といえる。我々は、難治性DiHS/DRESS患者の皮膚と血液についてscRNA-seqを行い、JAK–STATシグナル伝達経路が治療標的候補であることを明らかにした。さらに、セントラル記憶CD4+ T細胞がヒトヘルペスウイルス6bからのDNAに対して増強されていることも分かった。トファシチニブを用いた治療介入により、疾患管理や他の免疫抑制薬の漸減が可能になった。トファシチニブや抗ウイルス薬は、被疑薬誘導性のT細胞増殖をin vitroで抑制し、薬物有害反応の仲介にJAK–STAT経路やヘルペスウイルスが役割を担っていることが裏付けられた。従って、scRNA-seq解析によって難治性DiHS/DRESS患者での治療介入が成功した。scRNA-seqは、複雑なヒト疾患の病態生理学的性質の解明を進めると考えられ、個別化医療におけるまた別の手法をもたらすだろう。