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性ホルモン:男性と女性でのテストステロンの疾患への影響をヒトの遺伝学によって解明する

Nature Medicine 26, 2 doi: 10.1038/s41591-020-0751-5

テストステロン補充は、その性機能、骨の健康や体組成への影響のために一般的に使われているが、疾患の転帰へのその影響については分かっていない。この問題の解明を進めるために、我々は英国バイオバンクの研究参加者42万5097人で、テストステロンレベルの遺伝的決定因子とこれと近縁の性ホルモンの特性を明らかにした。2571のゲノム規模で有意な関連を用いて、テストステロンレベルの遺伝的決定因子群が両性間でかなり異なること、また遺伝的にテストステロン濃度が高くなると、代謝疾患に対して女性では有害な影響が、男性では有益な影響が見られることが明らかになった。例えば、遺伝的変化によってテストステロン濃度が1 s.d.上昇すると、女性では2型糖尿病の発症リスクと〔オッズ比 = 1.37(95%信頼区間:1.22–1.53)〕、多嚢胞性卵巣症候群の発症リスク〔OR = 1.51(95%信頼区間:1.33–1.72)〕が上昇するが、男性では2型糖尿病の発症リスクが低下する〔OR = 0.86(95%信頼区間:0.76–0.98)〕。また、テストステロン濃度の上昇は、女性では乳がんおよび子宮内膜がん、男性では前立腺がんに悪影響をもたらすことも分かった。今回得られた結果は、疾患へのテストステロンの影響に関する手掛かりをもたらし、性別特異的な遺伝学的解析の重要性を明確に示している。

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