胎児発育不全:母体の血清中代謝物の比から出生時の胎児発育不全が予測される
Nature Medicine 26, 3 doi: 10.1038/s41591-020-0804-9
胎児発育不全(FGR)は死産の主要な単一死因であり、また、新生児の病的状態や死亡率、小児期の健康障害や学業成績低下、その後の生活での多様な疾患にも関連している。FGRに対する効果的なスクリーニング法や介入は臨床的に必要だが、この問題は未だに解決されていない。本論文では、英国ケンブリッジで実施されたPOP(Pregnancy Outcome Prediction)研究での出生時FGR175例と対照299例について、妊娠週数(wkGA)が12、20および28の時点での母体血清を用いて行った超高速液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析(UPLC-MS/MS)によるメタボロミクス解析により、FGRを予測する代謝物を突き止めた。36 wkGAの試料を用いた内的妥当性評価により、負に関連する2つの代謝物(5α-アンドロスタン-3α,17α-ジオールジスルフェートおよびN1,N12-ジアセチルスペルミン)の相対濃度の積に対する、正に関連する2つの代謝物(1-(1-エニル-ステアロイル)-2-オレオイル-GPC(P-18:0/18:1)および1,5-アンヒドログルシトール)の相対濃度の積の比が出生時のFGRを予測することが実証された。この比は、これまでに開発された血管新生バイオマーカーである可溶性fms様チロシンキナーゼ1:胎盤増殖因子(sFLT1:PlGF)比と比較すると約2倍の識別能があった(AUC 0.78対0.64、P = 0.0001)。この代謝物比の予測性能は、人口統計学的に似ていないBiB(Born in Bradford)コホート研究(英国ブラッドフォードで実施された)の2つのサブサンプルを使って検証された(P=0.0002)。この代謝物比を用いるスクリーニングと介入は、妊娠約36週での超音波画像化と併せて、胎児の監視の強化と適当な時期での分娩誘発を介して有害事象を防ぐ可能性がある。