HIV:CTLA-4とPD-1の二重阻害はSIV再活性化を誘導するが、抗レトロウイルス療法中断後のリバウンドは抑制しない
Nature Medicine 26, 4 doi: 10.1038/s41591-020-0782-y
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の主要なリザーバーは、静止状態の記憶CD4+ T細胞から構成され、この細胞は免役チェックポイント受容体であるPD-1(programmed cell death protein 1)およびCTLA-4(cytotoxic T lymphocyte-associated protein 4)を発現していることが多く、T細胞活性化はこれによって相乗的機構を介して制限されている。本論文では、サル免疫不全ウイルス(SIV)に感染し、長期にわたって抗レトロウイルス療法(ART)を受けたアカゲザルを用いて、このようなサルではモノクローナル抗体を用いたPD-1阻害、CTLA-4阻害とCTLA-4/PD-1免疫チェックポイント二重阻害に対する耐容性が高いことを、血中とリンパ節での生物活性の証拠とともに明らかにした。二重阻害は、T細胞の増殖と分化の増強に関してはPD-1阻害単独の場合よりずっと高い有効性を示し、エフェクター記憶T細胞を増殖させ、血漿中および末梢血単核球でのロバストなウイルス再活性化を誘導した。リンパ節では、CTLA-4/PD-1の二重阻害は、CD4+ T細胞中のSIV-DNAの総量と無傷のSIV-DNA、またB細胞濾胞中(ARTの間のウイルス存続の主要な部位である)のSIV-DNAおよびSIV-RNAを減少させたが、PD-1だけではこのような影響は見られなかった。今回検証した介入方法はいずれも、ARTの間のCD8+ T細胞のSIV特異的応答、もしくはART中断後のウイルス抑制を増強することはなかった。従って、CTLA-4/PD-1阻害は、潜伏性解消をロバストに誘導し、組み込まれたウイルスの総量を低下させるにもかかわらず、リザーバークリアランスの程度はウイルス抑制の達成にはまだ不十分であった。これらの結果は、PD-1とCTLA-4の両方、もしくはそのいずれかを標的とする免疫チェックポイント阻害療法は、血中ウイルスが検出できない程度にHIVが維持されている患者で行うとしたら、また別の付加的な介入がない場合にはHIV寛解を誘導する可能性が低いことを示唆している。