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リスク予測:67万6000人に対するバイオバンク横断解析で明らかになった、複雑形質の多遺伝子性リスクスコアとヒト寿命との関連
Nature Medicine 26, 4 doi: 10.1038/s41591-020-0785-8
多遺伝子性リスクスコア(polygenic risk score;PRS)は、先天的な健康リスクの予測という理由で臨床現場への導入の準備が進められているが、健康転帰に影響する修飾可能なリスク因子に優先順位を付けるには遺伝学を用いた戦略が必要である。我々はこの目標に向けて、複雑形質に対する遺伝学的感受性とヒト寿命との関連性を、世界各地の3つのバイオバンクと共同で研究した〔ntotal = 67万5898;バイオバンク・ジャパン(n = 17万9066)、英国バイオバンク(n=36万1194)およびFinnGen(n = 13万5638)〕。因果関係の判別が難しい場合のある観察研究とは対照的に、PRSはヒトの寿命に影響を及ぼすバイオマーカーの特定に役立つ可能性がある。収縮期血圧の高いPRSは、人種横断的に短寿命(ハザード比 = 1.03 [1.02–1.04]、Pmeta = 3.9×10−13)および親の寿命(ハザード比 = 1.06 [1.06–1.07]、P = 2.0×10−86)と関連していた。肥満のPRSは、寿命に対して日本人とヨーロッパ人では異なる影響を示した(BMIに対してPheterogeneity = 9.5×10−8)。血圧と肥満の寿命に対する因果関係は、メンデル無作為化研究によってさらに裏付けられた。遺伝子型と表現型の関連を超えて、我々のバイオバンク横断研究は、集団の健康を改善する上で治療標的となる可能性のあるリスク因子の優先順位付けにおけるPRSの新たな価値を示している。