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がん治療:転移性髄芽腫と上衣腫の治療のためのCAR T細胞の脳脊髄液への局所領域送達
Nature Medicine 26, 5 doi: 10.1038/s41591-020-0827-2
再発性の髄芽腫や上衣腫は、承認された標的療法がなく、また現在臨床で評価中の治療法候補もほとんどないため、一般に致命的とされている。再発性髄芽腫と後頭蓋窩グループA(PFA)の上衣腫はほとんど全てが脳脊髄液に隣接して局在し、脳脊髄液に浸された状態にあるため、血液脳関門を回避する局所領域的治療を行えることがある。我々は、髄芽腫と上衣腫には発現しているが、発達中の正常な脳では発現していないEPHA2、HER2およびインターロイキン13受容体α2という、細胞表面にある3つの標的を突き止めた。そして、EPHA2、HER2およびインターロイキン13受容体α2のキメラ抗原受容体を発現するT細胞の髄腔内送達が、マウスモデルでの原発性、転移性および再発性のグループ3髄芽腫やPFA上衣腫の異種移植片に対する有効な治療であることが確認された。また、このようなキメラ抗原受容体発現T細胞の単独、あるいはアザシチジンと組み合わせての脳脊髄液への投与が、グループ3髄芽腫やPFA上衣腫の複数の転移マウスモデルで有効性の高い治療法であることが実証され、従って、ヒトでのこのような手法の適用の臨床試験を行うための論理的な根拠が示された。