COVID-19:イタリアでのCOVID-19エピデミックのモデル化と母集団全体への介入の実施
Nature Medicine 26, 6 doi: 10.1038/s41591-020-0883-7
イタリアでは2020年4月5日の時点で、SARS-CoV-2感染検査が陽性だった確定症例は12万8948件となり、診断確定後の死亡は1万5887人に上った。SARS-CoV-2のパンデミックを終息させるには、母集団全体にわたってソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)、検査や接触者追跡などの複数の戦略を実施する必要がある。今回我々は、エピデミックの経過を予測し、効果的な制御戦略を設計するのに役立つ新たなモデルを考案した。このモデルでは感染の8つの段階、すなわち感染しやすい状態(susceptible:S)、既感染(infected:I)、診断済み(diagnosed:D)、罹患状態(ailing:A)、診断済み発症(recognized:R)、重篤化(threatened:T)、治癒(healed:H)、死亡(extinct:E)を考え、それらの頭文字を取ってこのシステムをSIDARTHEと名付けた。SIDARTHEモデルでは、診断されたかどうか、また症状の重症度がどの程度かによって、感染者を区分けする。既診断者と未診断者の区別は重要で、それは陽性の既診断者は一般に隔離されており、感染を広げる可能性が低いからである。このような表現は、症例死亡率とエピデミック拡散についての誤解を説明するのにも役立つ。我々はシミュレーション結果と、イタリアでのCOVID-19エピデミックに関する実際のデータとを比較し、対策を実施するためのシナリオ候補をモデル化した。その結果、進行中のCOVID-19パンデミックを終息させるには、厳しいソーシャル・ディスタンシング措置を、広範囲にわたる検査および接触者追跡と組み合わせる必要があることが明らかになった。