Letter

肺腺がん:空間的位置による免疫変動によって明らかになった肺腺がんの特異な進化

Nature Medicine 26, 7 doi: 10.1038/s41591-020-0900-x

分子解析の著しい進歩は、がん細胞の免疫回避に向かう進化についての解明を進めた。免疫細胞と間質細胞の空間的配置は、腫瘍の空間的位置にまたがる免疫回避の進化を明らかにする可能性があるが、いまだに研究されていない。本論文では、TRACERxコホートの非小細胞肺がん患者100人について、複数の領域でのエキソームおよびRNA塩基配列解読(RNA-seq)データを、組織学的試料の深層学習による空間的位置付けと統合した。リンパ球の割合が低く「免疫学的に冷たい(immune cold)」領域に由来するがんサブクローンは、「免疫学的に熱い(immune hot)」領域由来のがんサブクローンよりも、変異空間の方に近縁で、より最近多様化したものであった。TRACERx、およびこれとは無関係の患者コホート(970人の肺腺がん患者からなり、複数サンプルが採取されたコホート)では、1つ以上の「免疫学的に冷たい」領域を持つ腫瘍は再発リスクが高く、これは腫瘍のサイズ、病期、患者当たりの試料数とは無関係だった。肺腺がんでは、抗原提示が破壊されていない腫瘍領域で、がん細胞と間質細胞の境界面の幾何学的不規則性と複雑性が大幅に増加していたが、肺扁平上皮がんではこうした増加は観察されなかった。クローン性ネオアンチゲン量の少ない腫瘍では、隣接する間質でのリンパ球集積の減少が観察された。まとめると、免疫の空間的位置による変動は腫瘍の生態学的な制約を説明していて、これが免疫を回避するサブクローンや侵襲性の高い臨床表現型の出現を形作っている可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度