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がん:ゲノム規模での無細胞DNA変異の統合により可能となった超高感度のがんモニタリング
Nature Medicine 26, 7 doi: 10.1038/s41591-020-0915-3
腫瘍量の低いがんを追跡するための感度の高い手段は、腫瘍学の多くの領域で欠けている。無細胞DNA(cfDNA)は、がんの変異を検出するのに有望とされているが、少量の腫瘍画分(TF)と限られた数のDNA断片の組み合わせでは、広く使われている高深度標的塩基配列解読のパラダイムによる低腫瘍量のモニタリングが制限されることが分かった。そこで我々は、塩基配列の解読の深度を範囲の広さで置き換えることで、cfDNAの存在量という障壁を克服できるのではないかと考えた。cfDNAの全ゲノム塩基配列解読(WGS)によって、固形悪性腫瘍で観察される数千の体細胞変異の累積シグナルを利用して超高感度の検出が可能になり、10−5という微量のTFを検出できる感度が得られる。このWGS手法では、腫瘍量の動的追跡や、有害転帰に関連する術後残存腫瘍を検出できる。従ってこの結果は、ゲノム規模での変異の統合を介したcfDNAがんモニタリングに対する直交的枠組を示しており、これにより超高感度の検出や、cfDNA存在量の制限の克服、低腫瘍量のがんケアにおける治療の最適化が可能になる。