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卵巣がん:高異型度漿液性卵巣がんの単一細胞レベルでの全体像

Nature Medicine 26, 8 doi: 10.1038/s41591-020-0926-0

悪性腹水は、進行した高異型度漿液性卵巣がん(HGSOC)の女性で頻繁に見られ、薬剤抵抗性と予後不良に関連付けられる。我々はHGSOC腹水の「生態的」特性を包括的に明らかにするために、単一細胞RNA塩基配列解読を行い、11人のHGSOC患者からの22の腹水検体から得たほぼ1万1000個の細胞のプロファイリングを行った。免疫調節性繊維芽細胞の亜集団や2つに分けられるマクロファージ集団などを含む腹水中細胞の組成と機能的プログラムには、患者間で大きなばらつきが見られた。また、以前に報告されていた予後に関わりのあるHGSOC免疫反応性サブタイプと間葉系サブタイプは、悪性細胞の明確なサブセットではなく、免疫浸潤細胞や繊維芽細胞の存在量を反映していることが分かった。悪性細胞のばらつきは、不均一なコピー数変異パターンや幹細胞性プログラムの発現により部分的に説明される。悪性細胞では炎症性プログラムの発現が共通しており、追加採取した試料(腹水3検体、原発性HGSOC腫瘍2検体、および患者腹水由来異種移植モデル3つを含む)に由来する約3万5000個の細胞の単一細胞RNA塩基配列解読でも、大部分で再現性が見られた。悪性細胞とがん関連繊維芽細胞の両方で発現しているJAK/STAT経路の阻害は、初代短期培養細胞や患者由来異種移植モデルで強力な抗腫瘍活性を示した。我々の研究は、HSGOCの全体像の解明に寄与し、新たな治療法の開発に対する情報を提供するものである。

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