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1型糖尿病:総合リスクスコアは1型糖尿病感受性の小児に対する発症予測能力を高める
Nature Medicine 26, 8 doi: 10.1038/s41591-020-0930-4
1型糖尿病(T1D)は、膵島が破壊される自己免疫疾患で、その結果としてインスリンが欠乏する。幼少児期に発症することが多く、膵島の自己抗体の出現によって高リスクであることが分かる。しかし臨床的な糖尿病の発症は数週間後、もしくは数十年後になることすらあり、予測が非常に困難である。発症時のケトアシドーシスは広く見られ、幼児期に最も重篤で、致命的あるいは治療困難となることがある。自己抗体サーベイランスプログラムは、ほとんどのケトアシドーシスを防ぐのに効果があるが、頻繁な評価が必要なことが、その費用の公的医療保険対象への採用を制限している。T1D発症が切迫してリスクが最も高い患者の特定が困難であるため、より大きな膵島塊が残っている発症前に使える予防療法が実行可能なことはほとんどない。我々は、こうした事態を改善するために、動かせない要因と変動する要因(遺伝的、臨床的、免疫的要因)の両方を組み込んだ総合リスクスコアを開発することによって、出生直後から9.3年間にわたって追跡した7798人の高リスク小児で、将来のT1Dリスクの正確で費用効果の高い推定法を探った。この総合モデルは、自己抗体のみの場合と比較すると、2~8歳の年齢でT1D予測を大幅に改善し[ROC曲線下面積(AUC) ≥ 0.9]、ケトアシドーシスを防ぐための集団ベースの新生児スクリーニングの推定効率を2倍にし、また、より良い予防試験選抜のための個別化リスク推定を可能にした。