COVID-19:無症候性SARS-CoV-2感染の臨床的および免疫学的評価
Nature Medicine 26, 8 doi: 10.1038/s41591-020-0965-6
SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)に感染した無症候性患者の臨床的特徴や免疫応答については十分に説明されていない。今回我々は、SARS-CoV-2感染がRT-PCRにより確定されたが、診断に先立つ14日間および入院期間中に感染に関連する臨床症状が見られなかった万州区の無症候性患者37人について調べた。無症候性患者は規定に従って、集中隔離のために政府指定の万州区人民医院に入院・収容された。無症候性患者グループのウイルス排出期間の中央値は19日〔四分位範囲(IQR)は15~26日〕だった。無症候性グループのウイルス排出期間は、有症候性グループよりも有意に長かった(ログランク検定のP = 0.028)。無症候性グループでのウイルス特異的IgGレベル(中央S/COは3.4、IQR は1.6~10.7)は、急性期では有症候性グループ(中央S/COは20.5、IQRは5.8~38.2)に比べて有意に低かった(P = 0.005)。無症候性患者では、回復期早期にIgGレベルの低下が93.3%(28/30)で、また中和抗体レベルの低下が81.1%(30/37)で見られたのに対し、有症候性患者では、IgGレベル低下は96.8%(30/31)で、中和抗体レベル低下は62.2%(23/37)で観察された。回復期早期には、無症候性患者の40%が血清学的陰性となり、有症候性患者の12.9%がIgG陰性となった。さらに、無症候性患者では18種類の炎症性および抗炎症性サイトカインのレベルが低かった。これらのデータは、無症候性患者はSARS-CoV-2感染に対する免疫応答が弱いことを示唆している。回復期早期のIgGおよび中和抗体レベルの低下は、免疫戦略や血清学的調査に関係する可能性がある。