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COVID-19:フランスでのSARS-CoV-2大流行の確率論的エージェント・ベース・モデル
Nature Medicine 26, 9 doi: 10.1038/s41591-020-1001-6
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対しては、ヨーロッパの多くの国々が全国規模の防御対策やロックダウンを実施している。しかし、このような対策が緩和されれば、大流行が再び起こり、2回目、あるいはもっと多くロックダウンを繰り返す必要が生じる可能性がある。今回我々は、フランスでのCOVID-19大流行に対する、確率論的エージェント・ベース・モデルによるマイクロシミュレーションを行った結果について報告する。我々は、フィジカル・ディスタンシング(物理的距離の確保)、マスクの着用、重篤なCOVID-19感染に対して最も脆弱な人々を保護するなどのロックダウン後の対策が、累積罹患率や累積死亡率、集中治療室(ICU)の病床利用率に及ぼすと思われる影響を調べた。ロックダウンはウイルス拡散の封じ込めには有効だが、一度解除すると、ロックダウン期間の長さに関わらず、感染再拡大を防げそうもない。フィジカル・ディスタンシングとマスクの着用はどちらも、大流行の進行を遅くしたり、死亡率を低下させたりするには有効だが、最終的にはICUの逼迫やそれに続く2回目のロックダウンを防ぐのに効果的ではないだろう。しかし、これらの対策と脆弱な人々の保護を組み合わせれば、致死率を低下させ、ICUの適切な収容力を維持して二次ロックダウンを防ぐなど、結果の改善につながる可能性がある。とはいえ、人々の大多数がこれらの対策を守らない、あるいは対策が十分な期間にわたって維持されないならば、その効果は大幅に縮小されるだろう。