Editorial

臨床試験での人工知能の使用について報告する際のガイドラインの策定

Nature Medicine 26, 9 doi: 10.1038/s41591-020-1069-z

人工知能(AI)の生物医学研究への導入は、この分野に非常に大きな影響を与えている。機械学習と深層学習アルゴリズムの最近の技術的進歩と臨床的問題解決へのその適用は、医療制度を強化し、臨床研究を大きく変えることが期待されている。AIを使うモデルの性能は、複数の概念実証研究によって明らかになり、十分なサイズのデータセットで訓練を行えば、臨床応用に適合した画像ベースの診断精度が得られ、入院患者に対する最適の治療レジメンの選択にも使用できると予想されている。しかしながら、このようなアルゴリズムの有用性は、現実世界の複雑性を再現できない、制御された設定条件下で検証されたものがほとんどである。

このような状態にあって、AI手法の評価を含む臨床実験の報告には、標準化した様式と高い品質の確保が必要である。今回、CONSORT(臨床試験報告に関する統合基準)-AIおよびSPIRIT(標準的なプロトコル項目:介入試験のための推奨)-AI運営委員会は、研究プロトコルの透明性向上とAIが含まれる無作為化臨床試験の報告書作成を行うための専門的なガイドラインを検討し直し、増補と改良を加えた。完成したチェックリストであるCONSORT-AIおよびSPIRIT-AIは、研究プロトコルと無作為化臨床試験報告書の質を改善するために作成されたCONSORTガイドラインとSPIRITガイドラインの増補版という体裁を取っていて、それぞれの説明書と共にこの号に掲載されている。増補部分には現在のガイドラインでは全く取り扱われていなかった項目が新たに取り込まれ、また取り扱いが不適切だった項目には修正が加えられている。

Nature Medicine は、CONSORT-AIガイドラインとSPIRIT-AIガイドラインを承認している。そのため、AIアルゴリズムを臨床での意思決定過程に使用している臨床試験結果を述べる論文には、投稿する際にCONSORT-AI増補版およびSPIRIT-AI増補版の基準を満たしていることが求められる。CONSORT-AI増補版を使った例は、この号のADVICE4U研究(1型糖尿病若年患者へのインスリン投与量決定についてAIを使用した場合と医師の指導による場合の比較)を参照されたい。

 臨床研究は、技術革新が医療ケアサービスを進展させる好機をもたらす可能性が高い新局面に差し掛かっている。CONSORT-AIガイドラインとSPIRIT-AIガイドラインは、使用される手法を責任を持って、透明性を維持しながら評価していくための基盤を築くものだ。我々は、AIによって増強されたヘルスケアサービスへの期待がどのようにして実現するのか、楽しみにしている。

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