HIV-1:HIV-1に対する広範囲中和モノクローナル抗体であるPGT121の安全性、薬物動態と抗ウイルス活性:無作為化プラセボ対照第1相臨床試験
Nature Medicine 27, 10 doi: 10.1038/s41591-021-01509-0
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1特異的な広範囲中和モノクローナル抗体は、HIV-1感染の治療と予防を目的として現在開発中である。我々は、HIV非感染成人および抗レトロウイルス治療(ART)中のHIV感染成人で、HIV-1 V3グリカン特異的抗体PGT121を3、10、30 mg kg−1の用量で単回投与する単一施設無作為化二重盲検用量漸増プラセボ対照試験と、ARTを受けておらずウイルス血症が見られるHIV感染成人で、PGT121を30 mg kg−1の用量で単回静注する多施設非盲検試験を行った(NCT02960581)。主要評価項目は、ウイルス血症が見られるがARTを実施してないHIV感染成人での安全性、耐容性、薬物動態(PK)および抗ウイルス活性であった。副次評価項目は、抗PGT121抗体の力価やCD4+ T細胞数の変化、PGT121耐性に関連するHIV-1塩基配列のばらつきの発生であった。登録された48人の参加者の中で、治療に関連した重度の有害事象や免疫の関与が疑われる疾患、グレード3以上の有害事象は報告されなかった。PGT121を投与された参加者の中で最もよく見られた反応は、静脈内や注射部位の圧痛と疼痛および頭痛であった。HIV感染者では、CD4+ T細胞の絶対数および相対数はPGT121注入後に変化しなかった。中和活性のある抗薬物抗体は誘導されなかった。PGT121は、ウイルス血症が見られる参加者で血漿のHIV RNAレベルを中央値1.77 log低下させ、ウイルス量の最低値が見られた中央値は8.5日だった。ウイルス量のベースラインが低い2人では、抗体注入後168日間以上にわたってARTなしでのウイルス抑制が認められ、これらの参加者でのリバウンドウイルスは、最大あるいは部分的なPGT121感受性を示した。本試験は、事前に指定した評価項目を満たした。これらのデータによって、ARTを実施中ではなく、ウイルス量が少ない患者での検討を含め、長期にわたるHIV抑制のための抗体を用いる治療戦略をさらに調べることの妥当性が示唆された。