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臨床遺伝学:SAMD9/SAMD9L症候群でのクローン性造血の臨床的進化、遺伝学的全体像および軌跡

Nature Medicine 27, 10 doi: 10.1038/s41591-021-01511-6

生殖細胞系列のSAMD9およびSAMD9Lの変異(SAMD9/9Lmut)は、体細胞により救済される傾向がある骨髄異形成症候群(MDS)の発症リスクを高める。本研究では、臨床的注釈付けされた小児MDSコホート(n = 669)を調べ、SAMD9/9L症候群の有病率、遺伝学的全体像、表現型、臨床転帰、クローン構造を明らかにした。一貫した方式による診断を受けたMDSでは、生殖細胞系列のSAMD9/9Lmutが8%を占め、コホートの7%で見られるGATA2変異とは相互に排他的だった。SAMD9/9Lmutの症例のうち、難治性血球減少症は最も割合の多いMDSサプタイプであり(90%)、後天性モノソミー7は38%、体質異常は57%、免疫機能不全は28%で見られた。臨床転帰は生殖細胞系列変異とは無関係だった。合計67人の患者で、タンパク質の中央領域にクラスター化した58の異なる生殖細胞系列SAMD9/9Lmutが見つかった。in silico予測では結論は出なかったが、SAMD9/9Lmutの94%はHEK293の細胞増殖を抑制し、CD34+細胞で変異を発現させると、明らかな細胞死が誘導された。さらに、SAMD9/9Lmut患者の61%では、somatic genetic rescue(SGR)と呼ばれるまれな遺伝的救済が起こり、クローン性造血をもたらし、そのうち95%は不適応であり(モノソミー7 ± がん変異)、51%は適応性を持っていた(復帰変異UPD7qと体細胞SAMD9/9Lmut)。また、骨髄の単一細胞DNA塩基配列解読から、個々の患者で複数の競合するSGR事象が見つかった。我々の知見は、SGRはSAMD9/9Lmut MDSでよく見られることを明らかにしており、小児の造血系には著しい可塑性があることを実証している。

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