COVID-19:抗CD20療法を受けている多発性硬化症患者で見られたSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の細胞性および体液性免疫応答
Nature Medicine 27, 11 doi: 10.1038/s41591-021-01507-2
健常者での重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)メッセンジャーRNAワクチン接種は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する免疫防御を生じる。しかし、免疫抑制療法を受けている患者でSARS-CoV-2 mRNAワクチンが誘導する応答についてはほとんど分かっていない。我々は、抗CD20抗体の単剤療法を受けている多発性硬化症(MS)患者(n = 20)と健康な対照者(n = 10)について、BNT162b2あるいはmRNA-1273 mRNAワクチン接種後の抗原特異的抗体、B細胞応答、およびT細胞応答の誘導を経時的に調べた。抗CD20モノクローナル抗体(aCD20)による治療によって、スパイク特異的抗体および受容体結合ドメイン(RBD)特異的抗体、それに記憶B細胞応答がほとんどの患者で有意に低下し、この低下は最後のaCD20治療からの期間が長くなるほど、またB細胞再構築の程度によって軽減された。対照的に、aCD20治療を受けた全てのMS患者で、ワクチン接種後に抗原特異的CD4およびCD8 T細胞応答が生じた。aCD20治療により応答が偏り、循環濾胞ヘルパーT(TFH)細胞応答が低下して、CD8 T細胞の誘導が増強されるが、1型ヘルパーT(TH1)細胞のプライミングは維持されていた。aCD20治療を受けて抗RBD IgGが見られないMS患者では、循環TFH細胞応答に最も重度の低下が見られ、CD8 T細胞応答はよりロバストであった。これらのデータは、aCD20治療を受けた患者でのSARS-CoV-2ワクチン誘導性免疫の全体像の性質を明らかにしており、ヒトでの協調されたmRNAワクチン誘導性免疫応答についての手掛かりを示している。我々の知見は、aCD20治療などによって免疫抑制状態にある患者に対する臨床的意思決定と公衆衛生政策に関係している。