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脊髄小脳失調症:RNAi発現コンストラクトをAAVを使って非ヒト霊長類脳へ送達した後に見られた毒性

Nature Medicine 27, 11 doi: 10.1038/s41591-021-01522-3

脊髄小脳失調症1型に対するRNA干渉(RNAi)は、マウスモデルで行動障害と神経病理学的症状の予防と回復が可能であり、その安全性と効果は数か月にわたり持続する。アデノ随伴ウイルスベクター(AAV.miS1)から発現させたRNAiトリガーは、調節異常の起きたmiR150などのマイクロRNA(miRNA)も修正した。我々はその後、この送達方法がスケーラブルであり、非ヒト霊長類(NHP)での短期間のパイロット試験でAAV.miS1が安全であることを明らかにした。そして、この技術を臨床使用に進める目的で、NHPで治験新薬(IND)申請のための研究を開始したところ、AAV.miS1を深部小脳核に送達した後、予期しなかった小脳毒性が観察された。小分子RNA塩基配列解読(small-RNA-seq)とmiRNAを含まないAAVを用いた研究は共に、この毒性が内在性miRNAプロセシング装置が飽和した結果ではないことを示していた。RNA-seqと同時にAAV産物の塩基配列解読を行ったところ、クロスパッケージングされた物質の量が限られているにもかかわらず、逆位末端反復配列(ITR)にかなりの大きさのプロモーター活性が見られ、これが神経病理学的症状と相関することが明らかになった。miS1発現の状況を変更すると、ITRプロモーター活性は低下した。齧歯類とNHPの間のこの意外な差異は、新たな治療法のヒトへの適用を評価する際には、複数の動物種に拡大した安全性研究が必要であることを明確に示している。

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