心不全:駆出率が保たれた心不全でのSGLT2阻害薬ダパグリフロジン:多施設無作為化試験
Nature Medicine 27, 11 doi: 10.1038/s41591-021-01536-x
駆出率が保持されている心不全(HFpEF)患者は、症状や機能的制限の負担が大きく、生活の質(QOL)が低い。ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、心代謝異常を標的とすることでこのような障害を改善する可能性がある。HFpEF患者についてのこの多施設無作為化試験(NCT03030235)では、SGLT2阻害剤ダパグリフロジンが投与開始後12週の時点で、心不全が関連した健康状態の指標であるカンザスシティー心筋症質問票臨床要約スコア(KCCQ-CS)の主要評価項目を改善するかどうかを評価した。副次評価項目には、6分間歩行試験(6MWT)、KCCQ総合要約スコア(KCCQ-OS)、KCCQ-CSおよびKCCQ-OSの臨床的に意味のある変化、それに体重、ナトリウム利尿ペプチド、糖化ヘモグロビン、収縮期血圧の変化が含まれている。合計で324人の患者が、ダパグリフロジン群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。ダパグリフロジンは、KCCQ総合症状スコア(KCCQ-TS)[5.8ポイント{95%信頼区間(CI)2.0~9.6、P = 0.003}]と身体制限スコア[5.3ポイント(95%CI 0.7~10.0、P = 0.026)]の両方が改善されたことで、KCCQ-CSが改善され[効果量5.8ポイント(95%CI 2.3~9.2、P = 0.001)]、事前に設定した主要評価項目を満たした。また、ダパグリフロジンは、6MWT[平均効果量20.1 m(95%CI 5.6~34.7、P = 0.007)]、KCCQ-OS[4.5ポイント(95%CI 1.1~7.8、P = 0.009)]、KCCQ-OSの5ポイント以上の改善が見られた参加者の割合[オッズ比(OR)= 1.73(95%CI 1.05~2.85、P = 0.03)]、体重減少[平均効果量0.72 kg(95%CI 0.01~1.42、P = 0.046)]も改善した。他の副次評価項目では有意差はなかった。有害事象は、ダパグリフロジン群とプラセボ群の間で同じであった[それぞれ44人(27.2%)対38人(23.5%)]。これらの結果は、慢性HFpEFでのダパグリフロジンの12週間投与は、患者が報告した症状、身体制限、運動機能を有意に改善し、耐容性も良好であったことを示している。