がん治療:HER2増幅切除不能進行大腸がんに対するペルツズマブとトラスツズマブの血中循環腫瘍DNAに基づく併用療法:第2相試験
Nature Medicine 27, 11 doi: 10.1038/s41591-021-01553-w
臨床試験にがん患者を登録する際に必要な情報を得るために、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)のジェノタイピングを用いることができるかどうかは確証されていない。我々は、腫瘍組織あるいはctDNAの解析によってヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の増幅が前向きに確定された切除不能進行大腸がん(mCRC)に対するペルツズマブとトラスツズマブの併用療法の有効性を評価するための第2相試験を実施した(UMIN000027887)。HER2増幅は、mCRC患者30人の組織やctDNAで確認された。確認された客観的奏効率は、組織でのHER2陽性患者27例で30%、ctDNAでのHER2陽性患者25例で28%であり、本研究は主要評価項目を満たした。一方、マッチするリアルワールドの参照集団では、標準治療のサルべージ療法を受けた症例の客観的奏効率は0%であった。探索的事後解析では、ベースライン時のctDNAジェノタイピングにおいて、腫瘍の割合で補正したHER2コピー数と同時に認められた原がん遺伝子異常の存在によって、組織ジェノタイピングと同様の精度で、患者を有効性に基づき層別化できることが明らかになった。治療開始3週間後のctDNAの割合の低下は治療への反応に関連していた。ペルツズマブとトラスツズマブの併用は、組織もしくはctDNAでのHER2増幅を伴うmCRC患者で同様の有効性を示したことから、ctDNAのジェノタイピングにより、HER2二重阻害療法が効果を示す患者を見つけ出すことが可能であり、また治療への反応をモニタリングできることが明らかになった。これらの知見は、HER2増幅mCRCの臨床試験でctDNAジェノタイピングをさらに使用していくことの裏付けとなる。これは、特に一次治療を受けている患者に有益となるだろう。