COVID-19:SARS-CoV-2侵入に関わる遺伝子の組織と患者背景にわたる単一細胞メタ解析
Nature Medicine 27, 3 doi: 10.1038/s41591-020-01227-z
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が細胞へ侵入するにはアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)とアクセサリープロテアーゼ(TMPRSS2とCTSL)が必要であり、これらの発現からウイルスの指向性や全身への影響に関する手掛かりが得られるかもしれない。我々は今回、さまざまな組織から得た107の単一細胞RNA塩基配列解読研究について、ACE2、TMPRSS2およびCTSLの細胞タイプ特異的な発現の評価を行った。ACE2、TMPRSS2、CTSLは、鼻腔、気道、肺胞の呼吸上皮細胞の特定のサブセットや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播や病態と関連する他の器官の細胞で共発現していた。我々はまた、228人の鼻腔、気道、肺実質の377の検体から得た132万896個の細胞を用いて、31の肺単一細胞RNA塩基配列解読解析のメタ解析を行った。その結果、年齢、性別、喫煙が、ACE2、TMPRSS2、CTSLの発現レベルと細胞タイプ特異的な関連性を示すことが明らかになった。気道分泌細胞と2型肺胞細胞などでの侵入因子の発現は、加齢に伴って増加し、男性の方が高かった。鼻腔、肺、腸管組織のACE2+TMPRSS2+細胞に共通する発現プログラムには、ウイルスの侵入や主要な免疫機能、上皮とマクロファージのクロストーク(インターロイキン6、インターロイキン1、腫瘍壊死因子、補体経路に関わる遺伝子など)を仲介する可能性のある遺伝子が含まれていた。細胞タイプ特異的な発現パターンは、COVID-19の病因に関与する可能性があり、我々の研究は、治療介入のための分子経路と思われるものを明らかにしている。