がん治療:再発性多発性骨髄腫患者での抵抗性経路と治療標的の単一細胞塩基配列解読による特定
Nature Medicine 27, 3 doi: 10.1038/s41591-021-01232-w
多発性骨髄腫(MM)は腫瘍性形質細胞疾患で、がん化した形質細胞のクローン増殖を特徴とする。詳しい研究が行われているものの、治療抵抗性の患者の体内や患者間での疾患の不均一性についてはよく分かっていない。本研究では、多施設での前向き単群臨床試験(NCT04065789)を行い、縦断的な単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)を組み合わせることで、MM抵抗性機構の分子動態を調べた。この試験には、新たに診断されたMM患者(ボルテゾミブを含む導入療法に応答しなかった、あるいは早期再発が起きた患者)41人が登録され、ダラツムマブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンの併用療法の安全性と奏効性が評価された。主要評価項目は安全性と耐容性とした。副次評価項目は、全奏効率、無増悪生存期間、全生存期間とした。治療は安全で耐容性も良好であり、持続的で深い奏功が達成された。事前に設定した探索的解析では、原発性難治性患者および早期再発患者41人と、健常者11人および新たに診断されたMM患者15人との比較から、治療抵抗性に関する新たなMM分子経路が明らかになり、これらの経路には低酸素耐性やタンパク質折りたたみ、ミトコンドリア呼吸などが関わっていて、より大きな臨床コホートであるCoMMpassで一般化された。また我々は、タンパク質折りたたみ応答経路の中心的酵素であるペプチジルプロリルイソメラーゼA(PPIA)が、抵抗性MMの新たな標的候補であることを見いだした。CRISPR–Cas9によるPPIAの欠失や、小分子阻害剤シクロスポリンによるPPIAの阻害を行うと、プロテアソーム阻害剤に対するMM腫瘍細胞の感受性が著しく高まった。まとめると、我々の研究は、scRNA-seqを臨床試験に組み入れるためのロードマップを明らかにし、高い抵抗性を示すMM患者のシグネチャーを突き止め、PPIAがこのような腫瘍での強力な治療標的であることを明らかにしている。