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マイクロバイオミクス:悪化した気管支拡張症での統合的マイクロバイオミクス

Nature Medicine 27, 4 doi: 10.1038/s41591-021-01289-7

気管支拡張症は進行性の慢性気道疾患で、微生物の定着と感染が特徴である。本論文では、気管支拡張症での細菌、ウイルスおよび真菌集団を統合したマルチバイオーム(multi-biome)に対処するための、WSNF(weighted similarity network fusion、https://integrative-microbiomics.ntu.edu.sg)を介する手法を示す。悪化のリスクが最も大きい患者の気道マイクロバイオームでは、微生物共存在ネットワークの複雑性が他より低く、多様性が低下していて、拮抗的相互作用の程度がより高いことが分かった。また、長期的なインタラクトーム動態から、病状が悪化する間に起こる微生物間の拮抗的相互作用が明らかになり、これは他の点では安定なマルチバイオームでは治療の後に解消する。Pseudomonas属のインタラクトームの評価から、存在度単独ではなく、相互作用ネットワークが悪化のリスクに関連していること、そして微生物間相互作用のデータを取り込むことで臨床予測モデルが改善されることが明らかになった。無関係なコホートのショットガンメタゲノム塩基配列解読によって、標的化解析で検出されたマルチバイオーム間相互作用が立証され、病状悪化との関連が確認された。統合的なマイクロバイオミクスは、微生物間の相互作用を捕捉して悪化リスクを決定できるが、これは単一の微生物集団の研究では評価できない。抗生物質を用いる戦略は、おそらく個々の微生物ではなく相互作用ネットワークを標的とするものであり、呼吸器感染症の解明を目指す新しい取り組みとなるだろう。

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