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COVID-19:COVID-19における免疫応答の単一細胞マルチオミクス解析

Nature Medicine 27, 5 doi: 10.1038/s41591-021-01329-2

ヒト血液中の免疫細胞を解析することで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)などのウイルス感染に対する協調的な免疫応答についての手掛かりが得られる。本論文では、重症度が異なる130人のCOVID-19患者からなる横断研究コホートから得られた78万個を超える末梢血単核細胞について、単一細胞トランスクリプトーム解析、表面プロテオーム解析、T/Bリンパ球抗原受容体解析を行った。その結果、COVID-19患者の末梢血中で補体系の転写産物を発現する非古典的な単球(CD16+C1QA/B/C+)の増殖が明らかになった。この単球は血小板との強い細胞間相互作用を有しており、COVID-19症例では肺胞マクロファージの供給源となっていることが示唆された。また、巨核球系前駆細胞の増殖と血小板活性の増加に伴って、初期の未分化CD34+造血幹/前駆細胞は、巨核球系へのプライミングが亢進していることが明らかになった。クローン増殖したCD8+ T細胞の存在と、CD8+エフェクター記憶T細胞に対するエフェクターT細胞の割合の上昇は、COVID-19重症例の特徴である一方、循環血中の濾胞性ヘルパーT細胞は軽症例に多く見られた。また、形質芽細胞と形質細胞の全体的な増殖にもかかわらず、有症状例ではIgA2の相対的な喪失が観察された。我々の研究は、COVID-19発症に関与する協調的な免疫応答があることを示し、また、治療標的となる可能性のあるさまざまな細胞集団を明らかにしている。

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