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クローン性造血:クローン性造血における一塩基多型とコピー数異常の全体像
Nature Medicine 27, 7 doi: 10.1038/s41591-021-01411-9
一見健常と見られる個体でのクローン性造血(CH)は、造血器悪性腫瘍(HM)や心血管疾患との関連が示唆されている。従来のCH研究では、一塩基多型と挿入欠失(SNV/indel)、もしくはコピー数異常(CNA)に着目して解析が行われてきたが、この両方を同時に解析した研究はない。今回我々は、血液由来DNAについて、23個のCH関連遺伝子の標的塩基配列解読と、マイクロアレイを用いたCNA検出を併用することにより、バイオバンクジャパンのコホートに登録されたHMの既往のない1万1234人(このうち672人がその後HMを発症した)でのCHに関連したSNV/indelとCNAの全体像を明らかにするとともに、これらの体細胞異常がHMや心血管疾患の死亡率に及ぼす影響と、血液学的表現型や心血管表現型に及ぼす影響についても検討した。両方のタイプの異常を合わせたCH関連病変の数とそれらのクローンサイズは、血球数異常やHMによる死亡率と正の相関を示した。CHに関連したSNV/indelとCNAは、同一の対象者で統計学的に有意に共存していた。特に、DNMT3A、TET2、JAK2、TP53に影響するSNV/indelとCNAの共存は、これらの遺伝子の対立遺伝子両方の異常を引き起こし、HM死亡率の上昇と相関していた。SNV/indelとCNAの共存は、心血管疾患による死亡リスクにも影響していた。これらの知見は、CHを評価する際に、SNV/indelとCNAの両方を検出することの重要性を示している。