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腫瘍ゲノミクス:治療対象となり得る転移性がんのゲノムで見られた治療圧下での限定的な進化

Nature Medicine 27, 9 doi: 10.1038/s41591-021-01448-w

ゲノムプロファイリングは転移性がん患者の治療選択肢を明らかにするために非常に重要だが、疾患の進行中にプロファイリングをどの程度の頻度で繰り返すべきなのかは分かっていない。我々はこの問題に取り組むために、代表的な転移性固形悪性腫瘍の成人患者231人から治療過程で経時的に収集された250対の生検試料の全ゲノム塩基配列解読(WGS)データを解析した。生検と生検の間の期間(中央値は6.4か月)に、患者は1回以上の(ほぼ)標準的な治療(SOC)を受けており、その中には全ての主要な治療法が広く含まれている。SOCバイオマーカーと臨床試験登録用バイオマーカーはそれぞれ、生検の23%と72%で確認できた。SOCゲノムバイオマーカーに対しては、1回目と2回目の生検の間の対で99%に完全な一致が見られた。最初の生検で特定された219の臨床試験登録用バイオマーカーのうち、フォローアップ生検では94%が保存されていた。さらに、2回目のWGS解析では、91%の患者で追加の臨床試験登録用バイオマーカーは見つからなかった。小分子阻害剤やホルモン療法の標的となる特定の遺伝子について検討すると、より頻繁なゲノム進化が観察された(症例のそれぞれ21%と22%)。以上のデータは、治療された転移性腫瘍の治療対象となり得るゲノム進化は限定的であることを実証している。SOCゲノムバイオマーカーを突き止め、試験的治療の機会を明らかにするには、転移性腫瘍の生検の1回のWGS解析で、一般的には十分である。

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