認知障害:ミクログリア活性化とタウは全てのブラークステージにわたって共に伝播する
Nature Medicine 27, 9 doi: 10.1038/s41591-021-01456-w
アルツハイマー病(AD)でのミクログリア活性化は、新皮質全体にわたってタウの神経原繊維変化の広がりに関与していることが、説得力のある実験的証拠で示唆されている。我々は、ミクログリア活性化とタウ蓄積の空間的伝播が、ヒトの生体脳ではブラーク(Braak)様パターンで共局在するという仮説を検証した。年齢およびADの臨床症状がさまざまな130人で、陽電子放出断層撮影法による脳の画像化を用いてミクログリア活性化([11C]PBR28)、アミロイドβ(Aβ)([18F]AZD4694)およびタウ([18F]MK-6240)病変について調べた。さらに、ミクログリアのTREM2(triggering receptor expressed on myeloid cells 2)の脳脊髄液(CSF)濃度と脳でのTREM2遺伝子発現パターンを評価した。[11C]PBR28は、CSF中の可溶性TREM2と相関することが分かり、またTREM2遺伝子発現に類似した脳領域分布が見られることが示された。ネットワーク解析から、ミクログリア活性化とタウ蓄積は、ブラーク分類様ステージに従って、互いに階層的に相関していることが示された。回帰分析から、長期的なタウ伝播経路は、タウネットワーク回路ではなく、ベースライン時のミクログリアネットワークに依存することが明らかになった。Aβ、タウ、ミクログリアの異常が同時に生じることは、我々の研究集団での認知障害の最も強力な予測因子であった。我々の知見は、Aβと活性化ミクログリアの間の相互作用が、全ブラークステージにわたって、タウの広がりの速度を決めるというモデルを裏付けている。