がん治療:転移性去勢抵抗性前立腺がんでのアテゾリズマブとエンザルタミドの併用療法とエンザルタミド単剤療法との比較:無作為化第3相試験
Nature Medicine 28, 1 doi: 10.1038/s41591-021-01600-6
初期の臨床データでは、去勢抵抗性前立腺がん患者の一部はPD-L1(program death ligand-1)阻害から恩恵を受ける可能性があり、特にエンザルタミドを併用した場合にそれが著しいことが示されている。IMbassador250試験(no. NCT03016312)には、転移性去勢抵抗性前立腺がんの男性で、前治療であるアビラテロンで疾患が進行した759人が登録された。非盲検無作為化試験でエンザルタミドにアテゾリズマブを追加した場合、安全性プロファイルは許容可能であったが、選択を行っていない患者での全生存期間の延長という主要評価項目は達成できなかった[層別化ハザード比 1.12、95%信頼区間(0.91、1.37)、P = 0.28]。保存腫瘍検体では、既知の重要な免疫バイオマーカーの発現は比較的低かった。DNA損傷応答の変化、PTEN(phosphatase and tensin homolog)の状態、PD-L1発現レベルは、ホルモン感受性前立腺がん検体と去勢抵抗性前立腺がん検体の間で同程度であった。計画されたバイオマーカー解析では、PD-L1 IC2/3、CD8発現、免疫遺伝子シグネチャーが確立している患者群ではアテゾリズマブ追加により、より長い無増悪生存期間が見られるようになった。探索的解析から、アテゾリズマブ群の無増悪生存期間は、CXCL9やTAP1などの免疫遺伝子に加え、PTEN異常などの他のバイオマーカーとも関連があった。まとめるとこれらのデータは、免疫チェックポイント阻害剤への応答に関連すると予測される生物学的性質は、少数の患者ではあるが、前立腺がんにも存在することが示された。この治療法が有効となる可能性のある患者のサブグループを見つけ出すには、免疫チェックポイント阻害剤に対して患者を慎重に選択することが必要となるだろう。