感染症:臨床用MALDI-TOF質量スペクトルから機械学習を使って行う抗菌剤耐性の直接予測
Nature Medicine 28, 1 doi: 10.1038/s41591-021-01619-9
効果的な抗生物質による早期の治療は、感染症の転帰と治療耐性の防止に欠かせない。最適な抗生物質による治療の選択は抗菌剤耐性試験により可能であるが、現在行われている培養ベースの技術では結果が出るまでに最長で72時間かかる場合がある。我々は、臨床分離株のマトリックス支援レーザー脱離イオン化–飛行時間型(MALDI-TOF)質量スペクトルのプロファイルから抗菌剤耐性を直接予測する、新規な機械学習法を開発した。我々は、臨床への関連性が最も高い分離株からの質量スペクトルプロファイルとそれにつながる抗菌剤感受性表現型を含む、新たに作られた公的に入手可能なデータベース上で較正されたクラシファイヤーの訓練を行った。このデータセットは、4つの医療機関からの30万を超える質量スペクトルと75万を超える抗菌剤耐性表現型を組み合わせたものである。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の3つを含む臨床的に重要な病原体についての評価では、受診者動作特性曲線下面積(AUROC)がそれぞれ0.80、0.74、0.74となったことで、機械学習を用いて抗菌剤耐性の決定および臨床管理の変更が大幅に加速できる可能性が実証された。さらに、63人の患者を対象とした後ろ向き臨床症例研究により、この方法を実施することで、9例で臨床治療方法が変更され、その8例(89%)で有益となる可能性が明らかになった。従って、MALDI-TOF質量スペクトルをベースとする機械学習は、治療の最適化と抗生物質管理の重要な新規手法となる可能性がある。