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がん治療:強力かつ選択的な非共有結合性KRASG12D阻害剤の抗腫瘍効果

Nature Medicine 28, 10 doi: 10.1038/s41591-022-02007-7

KRASG12Cの標的化における近年の進歩は、別のKRAS変異体の標的化に関する手掛かりやひらめきをもたらした。本研究では、強力かつ選択的な非共有結合性KRASG12D阻害剤であるMRTX1133の作用機序と抗腫瘍効果について評価を行った。MRTX1133は、GDPと結合しているKRASG12Dに高い親和性で結合し、KDは約0.2 pM、IC50値は < 2 nMで、KRASG12Dへの結合選択性は、KRASWTと比較すると、そのほぼ700倍であった。またMRTX1133は活性化型KRASG12Dを強力に阻害することも、生化学的解析および共結晶構造解析から明らかになった。MRTX1133は、KRASG12D変異細胞株でERK1/2のリン酸化と細胞生存能力を阻害し、IC50の中央値は〜5 nMで、KRASWT細胞株と比較した場合、1000倍を超える選択性を示した。MRTX1133は、KRASG12D変異細胞株由来および患者由来の異種移植片モデル〔膵管腺がん(PDAC)モデル11例中8例(73%)を含む〕のサブセットで、KRASを介するシグナル伝達の用量依存的な阻害や顕著な腫瘍抑制( ≥ 30%)を示した。薬理学的スクリーニングおよびCRISPRベースのスクリーニングによって、EGFRもしくはPI3Kαが関わるフィードバック経路あるいはバイパス経路が予想され、これらをKRASG12Dと共に標的とすることが抗腫瘍活性の増強につながることが示された。まとめると、これらのデータは非共有結合性で親和性の高い小分子によってKRAS変異体を選択的に標的化することの実行可能性を示しており、KRASG12D変異陽性の腫瘍が治療感受性と腫瘍細胞の増殖と生存を変異KRASに広く依存していることを明らかにしている。

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