肺繊維症:電子健康記録中の併存疾患シグネチャーを用いた特発性肺繊維症のスクリーニング
Nature Medicine 28, 10 doi: 10.1038/s41591-022-02010-y
特発性肺繊維症(IPF)は、致命的な繊維化が起こる間質性肺疾患の1つで、その平均生存期間は5年未満である。IPFの初期症状は非特異的で有効な早期スクリーニング手段がなく、病理生物学的性質が不明確であり、さらに診断の確定には侵襲性の高額な検査が必要なことが早期診断の妨げとなっている。本研究では、プライマリーケア環境で使える新たなIPFスクリーニング手段を示す。この手法は新たな検査室検査を必要とせず、初期症状の確認も不要である。我々は、個人の病歴聴取記録で見つかったわずかな併存疾患シグネチャーを用いて、IPF診断の将来的なリスクを予測するアルゴリズムを開発し、ZCoR-IPF(zero-burden comorbidity risk score for IPF)と命名した。ZCoR-IPFを国民保険金請求データベース(national insurance claims database)によって訓練し、5万4,247件の陽性症例を含む合計298万3,215人の参加者からなる3つの独立したデータベースにより検証した。このアルゴリズムは、多様なコホート、男性と女性の両方、それに多様なリスク状態と交絡疾患の病歴を持つ登録者において、特異度0.99で陽性尤度比30以上を達成した。IPF予測におけるZCoR-IPFに対するROC(receiver operating characteristic curve)下面積は、従来の診断の1年前の時点では0.88を超え、4年前の時点では約0.84だった。従って、ZCoR-IPFが採用されれば、IPFのより早い診断が可能になり、疾患修飾療法や他の介入の転帰を改善できると考えられる。