1型糖尿病:1型糖尿病でのグルカゴン受容体アンタゴニストのボラジデマブの有効性 ─ 12週間にわたる無作為化二重盲検第2相試験
Nature Medicine 28, 10 doi: 10.1038/s41591-022-02011-x
高グルカゴン血症は1型糖尿病(T1D)患者で高血糖の一因となっているが、グルカゴン作用を遮断する新規な治療法は血糖管理を改善する可能性がある。この第2相試験では、グルカゴン受容体(GCGR)のアンタゴニストとして働くモノクローナル抗体ボラジデマブについて、成人T1D患者でのインスリン療法の補助としての安全性と有効性を評価した。主要評価項目は、12週目での1日当たりのインスリン使用量の変化であった。副次評価項目には、13週目でのヘモグロビンA1c(HbA1c)値の変化、持続血糖測定(CGM)と1日7点測定血糖値プロファイルによって評価した12週の時点での血糖値の1日の平均値および目標範囲内の時間、低血糖事象の発生、0.4%以上のHbA1c値低下を達成した患者の割合、ボラジデマブの濃度、抗ボラジデマブ抗体の発生が含まれた。適格患者(n = 79)は、プラセボ群、ボラジデマブ35 mg群、ボラジデマブ70 mg群に無作為に割り付けられ、週1回皮下注射による投与を受けた。ボラジデマブは、12週目での1日当たりの総インスリン使用量を減少させたが〔ボラジデマブ35 mg群:−7.59 単位(U)(95%信頼区間(CI)−11.79, −3.39、プラセボ群に対しP = 0.040)、ボラジデマブ70 mg群:−6.64 U(95% CI −10.99, −2.29、プラセボ群に対しP = 0.084)、プラセボ群:−1.27 U(95% CI −5.4, 2.9)〕、事前に設定された有意水準(P < 0.025)を満たさなかった。13週目でのHbA1c値(%)のプラセボ補正後の減少は、ボラジデマブ35 mg群では−0.53(95% CI −0.89, −0.17、名目上のP = 0.004)であり、ボラジデマブ70 mg群では−0.49(95% CI −0.85, 0.12、名目上のP = 0.010)であった。ボラジデマブ療法では低血糖症の増加は観察されなかったが、血清トランスアミナーゼ、低密度リポタンパク質(LDL)-コレステロール、血圧の上昇が観察された。主要評価項目は事前に設定された有意水準を満たさなかったが、観察されたHbA1c値の減少と許容可能な安全性プロファイルから、T1D患者でのボラジデマブの長期的有効性と安全性を明らかにするためにさらなる無作為化試験を行うことの論理的根拠が得られたと我々は考えている。