生体心臓弁:生体心臓弁の石灰化と劣化における対グリカン抗体応答の役割
Nature Medicine 28, 2 doi: 10.1038/s41591-022-01682-w
生体心臓弁(BHV)は、重度の機能障害がある心臓弁との置換に一般的に用いられるが、若齢の患者では心臓弁構造的劣化(SVD)に対する感受性のため使用が制限される。我々は、BHVに存在する免疫原性グリカンに対する抗体、特に異種抗原であるガラクトース-α1,3-ガラクトース(αGal)およびN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)に対する抗体が、石灰化によるBHVの劣化を仲介する可能性があると考えた。我々は、国際的に大規模な経時的かつ前方向的患者コホート[n = 1668、34 ± 43か月の追跡期間(0.1~182)、4998の血液試料]を確立して、大動脈弁置換術後、最大で15年間後までのBHVに関連する血行動態と免疫応答を調べた。BHVレシピエントの5%未満で、2年以内に初期SVDの兆候が出現した。抗αGal IgGと抗Neu5Gc IgGのレベルは共に、BHV移植の1か月後に有意に上昇した。その後、これらのIgGレベルは低下したが、抗αGal IgGレベルは、BHVレシピエントよりも対照患者で有意に速く低下した。石灰化したBHVでは、Neu5Gc、抗Neu5Gc IgG、補体沈着が、石灰化した患者本来の大動脈弁よりもずっと高いレベルで見られた。さらに、マウスでは、αGalおよびNeu5Gcの抗原を欠損するように改変されたBHV組織を皮下移植した場合、抗Neu5Gc抗体はそこへのカルシウム沈着を促進できなかった。これらの結果は、αGalおよびNeu5Gcが欠損したドナー組織を用いて製造されたBHVは、免疫を介する劣化を起こしにくく、耐久性が向上している可能性があることを示している。