COVID-19:祖先ウイルスであるSARS-CoV-2特異的T細胞はオミクロン変異株を交差認識する
Nature Medicine 28, 3 doi: 10.1038/s41591-022-01700-x
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の「懸念される変異株」であるオミクロン(B.1.1.529)変異株の出現は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を抑制しようとする世界的な取り組みを揺るがすものとなった。最近のデータでは、B.1.1.529は自然に獲得した免疫やワクチンで誘導された免疫を持つ人々に容易に感染でき、いくつかの症例では、祖先であるSARS-CoV-2を中和する抗体からのウイルスの逃避によって感染が促進されることが示唆された。しかし、そのような感染者で重症となることは比較的少なく、適応免疫系の他の構成要素が関わっている可能性が明らかとなった。本論文では、以前の感染、もしくはBNT162b2ワクチン接種によって誘導されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質特異的CD4+およびCD8+ T細胞が、B.1.1.529に対してかなり広く免疫防御をもたらしていることを報告する。既感染者もしくはBNT162b2ワクチン既接種者では、B.1.1.529を交差認識するSARS-CoV-2スパイク特異的CD4+ T細胞の相対的な頻度の中央値はそれぞれ84%と91%であった。これに対応する、SARS-CoV-2スパイク特異的CD8+ T細胞の相対的な頻度の中央値はそれぞれ70%と92%であった。さらにグループ間での対比較によって、SARS-CoV-2スパイク反応性のCD4+およびCD8+ T細胞は機能的にも表現型的にも、祖先株もしくはB.1.1.529株に対する応答が類似していることが明らかとなった。まとめると、我々のデータは、すでに確立されているSARS-CoV-2スパイク特異的CD4+およびCD8+細胞応答は、特にBNT162b2ワクチン接種後は、B.1.1.529に対しておおむねそのまま保持されていることを示している。