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うつ病:うつ病に対するシロシビン治療後の脳での全体的な統合の増強

Nature Medicine 28, 4 doi: 10.1038/s41591-022-01744-z

シロシビンによる治療では、この薬が抗うつ剤となる可能性が示されているが、その治療作用についてはよく分かっていない。我々は、うつ病の2つの臨床試験で、シロシビンが脳機能に及ぼす亜急性の影響を評価した。第1の試験は非盲検試験で、治療抵抗性うつ病の患者でのシロシビン経口投与(10 mgおよび25 mgを7日の間隔で投与)であった。ベースライン時と25 mg投与の1日後に機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による測定が行われた。主要評価項目はベックうつ病調査表(Beck’s depression inventory)であった(MR/J00460X/1)。第2の試験は、シロシビン治療とエスシタロプラムを比較する二重盲検第II相無作為化比較試験で、大うつ病性障害の患者をシロシビン群(シロシビン25 mgの経口投与を2回、3週間の間隔を空けて行うとともに、6週間にわたり毎日プラセボを投与する)、あるいはエスシタロプラム群[シロシビン1 mgの経口投与を2回、3週間の間隔を空けて行うとともに、6週間にわたり毎日エスシタロプラム(10~20 mg)を投与する]のどちらかに割り付けた。fMRIによる測定は、ベースライン時と2回目のシロシビン投与の3週間後に行った(NCT03429075)。両方の試験で、シロシビンに対する抗うつ的応答は迅速かつ持続的であり、fMRIでの脳ネットワークのモジュール性低下と相関していたので、シロシビンの抗うつ作用は脳ネットワークの統合の全体的な増強に依存している可能性が考えられた。ネットワーク地図作製解析から、5-HT2A受容体に富む高次機能ネットワークが、シロシビンによる治療後に相互接続がより機能的になり、柔軟性を持つようになることが分かった。エスシタロプラムに対する抗うつ応答はより穏やかであって、脳ネットワーク構成の変化は観察されなかった。シロシビンによる治療によって、有効性に関連した脳の変化が2つの研究で一貫して見られ、これがロバストな抗うつ効果と相関していることから、シロシビン治療の抗うつ機構は脳ネットワーク統合の全体的な増強であると考えられる。

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