HIV:HIVと共に生きるHIV陽性者でのAAV8による広域中和抗体送達の安全性と耐容性 ─ 第1相用量漸増試験
Nature Medicine 28, 5 doi: 10.1038/s41591-022-01762-x
アデノ随伴ウイルス(AAV8)ベクターによる抗HIV広域中和抗体(bnAb)をコードするDNAの送達は、ワクチン接種やbnAbの反復注入による防御誘導の企ての代替手段となる。本研究では、HIV-1に対する強力な広域中和抗体VRC07の軽鎖と重鎖の両方をコードするバイシストロニックな組換えアデノ随伴ウイルスベクター(AAV8-VRC07)を、8人のHIV陽性者に投与した。今回の第1相用量漸増臨床試験(NCT03374202)の期間を通じて、全被験者で有効性の高い抗レトロウイルス療法〔1 ml当たりのウイルス量(VL)<50コピー〕が継続された。AAV8-VRC07は、1 kg当たり5×1010、5×1011、2.5×1012ベクターゲノムが筋肉内注射により投与された。本研究の主要評価項目は、AAV8-VRC07の安全性と耐容性の評価、in vivoでのVRC07産生の薬物動態と免疫原性の決定、AAV8-VRC07ベクターとその産物を標的とする免疫応答の評価とした。副次評価項目は、AAV8-VRC07のCD4 T細胞数とVLへの臨床的影響の評価、および被験者で産生されたVRC07の持続性の評価とした。このコホートでは、AAV8-VRC07の筋肉内注射は安全で耐容性も良好だった。今回報告する1~3年間の追跡期間中には、CD4 T細胞の数やVLに有意な臨床的変化は認められなかった。AAV8-VRC07を投与された被験者では、AAV8-VRC07筋肉内注射の6週間後(P = 0.008)および52週間後(P = 0.016)の時点で、VRC07の濃度が増加していた。8人の被験者全員で測定可能な量の血清VRC07が産生されており、VRC07の最大濃度は3人の被験者で>1 μg ml−1だった。4人の被験者では、最長で3年間にわたる追跡期間中を通して、最大に近いVRC07血清濃度が安定に維持されていた。探索的解析では、in vivoで産生されたVRC07は、in vitroで産生されたVRC07と同等の中和活性を示した。8人中3人の被験者で、VRC07のFab部分に対する非イディオタイプの抗薬物抗体(ADA)応答が見られた。このADA応答は、この3人の被験者中の2人で血清VRC07の産生を低下させたように見えた。これらのデータは、生物学的活性を持ち、誘導困難なbnAbをアデノ随伴ウイルスベクターによってin vivoで持続的に産生させることが可能であるという概念を実証したもので、この結果は感染症と戦うための価値ある新しい手段となる可能性がある。