Article

人工知能:がん組織病理学における分散型人工知能のための群れ学習

Nature Medicine 28, 6 doi: 10.1038/s41591-022-01768-5

人工知能(AI)は、日常的に作製されている病理組織スライドから直接、分子レベルの変化の存在を予測することができる。ロバストなAIシステムの訓練には大規模なデータセットが必要だが、そのためのデータ収集は実務的、倫理的、法的な障害に直面することになる。このような障害は、群れ学習(swarm learning:SL)を行うことで克服できる。群れ学習では、データ転送や独占的なデータガバナンスを回避しながら、パートナーが合同でAIモデルを訓練する。今回我々は、5千人以上の患者から得たギガピクセルの組織病理画像の大規模多施設データセットでSLを使って成功した例を示す。SLにより訓練したAIモデルは、大腸がんのヘマトキシリン・エオシン(H & E)染色病理スライドから、BRAFの変異状態とマイクロサテライト不安定性を直接予測できることが明らかになった。我々は、北アイルランド、ドイツおよび米国からの3つの患者コホートでAIモデルを訓練し、英国の2つの別々のデータセットで予測成績を検証した。我々のデータから、SLで訓練したAIモデルは、ローカルトレーニングで訓練されたほとんどのモデルよりも成績が良く、結合データセットで訓練されたモデルと同程度の成績であることが示された。さらに、SLベースのAIモデルは、データ効率が良いことも分かった。将来的には、SLはさまざまな組織病理画像解析タスク用の分散型AIモデルの訓練にも使えるようになり、テータ転送の必要性もなくなると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度