Perspective

救急救命医療:重症疾患を見直す

Nature Medicine 28, 6 doi: 10.1038/s41591-022-01843-x

救急救命医療での研究と診療は、長い間、原因不明の共通の症状群、いわゆる症候群に基づいて境界が定められてきた。症候群は臨床的には見分けがつくが、実際には不均一な状態がまとまりなく混ざり合っていて、治療に対して相異なる応答を示すことがある。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染による呼吸不全の研究などによって裏付けられたように、境界領域的な証拠が増加していることは、重症疾患についての症候群ベースの現在の枠組みを再考すべきであることを示唆している。今回我々は、救急救命医療に関して基礎科学と臨床研究から得られた最近の知見について論じ、こうした知見から重症疾患の新たな概念モデルに対してどのような情報が得られるかを探る。我々は症候群に重点を置くことから脱して、重症疾患の原因となっていて、治療に馴染みやすいと思われる生物学的変化に注目している。このような取り組み方は、今後の救急救命研究を加速し、重症疾患の病理生物学的性質や患者の転帰の重要な決定要因についてのより価値のある理解に繋がるだろう。さらにこのことは、より実効的な臨床試験設計の支援や、より厳格でもっと効果的な臨床ケアに役立つと思われる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度