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COVID-19:SARS-CoV-2オミクロン株の中国での伝播をモデル化する

Nature Medicine 28, 7 doi: 10.1038/s41591-022-01855-7

中国はより伝播性の高い重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異株に対応するために、2021年8月以来、ダイナミック・ゼロコロナ戦略を採用してきたが、現在はこの政策が依然として有効であるのか、またどのくらい続けることが可能であるのかを検討中である。従って、議論は全国的なエピデミックとなった場合に医療体制の崩壊を最小限に止めるための緩和策を見出す方向へと進んでいる。このような目的のために、我々は仮想的な緩和シナリオの下で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疾病負担(すなわち、症例数、入院や集中治療を必要とする患者数および死亡者数)の推移を予想するため、上海で2022年にオミクロンの大流行が起こった際の初期の増加段階を基に較正したSARS-CoV-2伝播の年齢構成化確率的コンパートメンタルSLIRS(susceptible-latent-infectious-removed-susceptible)モデルを開発した。このモデルは、年齢特異的なワクチン接種率データ、多様な臨床評価項目に対するワクチンの有効性、免疫の減弱化、さまざまな抗ウイルス治療、そして非薬物的介入についても考慮している。2022年3月のワクチン接種キャンペーンによって作りだされた免疫レベルはオミクロン流行の波を防ぐには不十分と考えられ、その結果としてケアのキャパシティーの限界を超えて、集中治療室の需要が既存のキャパシティの15.6倍となると予想され、死亡者数は約1億5500万人になるという推定が明らかになった。しかし、高齢者や併存症のある弱者をワクチン接種促進や抗ウイルス療法の確保によって守り、非薬物的介入の実施を続けることで医療体制の崩壊を阻止するのに十分である可能性も示され、これらの要因は将来的な緩和策において強調すべき点であることが示唆された。

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