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腸内細菌相:糞便微生物移植後の細菌株動態の促進因子と決定要因

Nature Medicine 28, 9 doi: 10.1038/s41591-022-01913-0

糞便微生物相移植(FMT) は消化管の炎症性疾患に対する治療的介入だが、その臨床での作用様式と移植後のマイクロバイオーム動態はほとんど解明されていない。我々は、10の異なる適応疾患の治療のために行われた316のFMTで、介入の前後に採取されたメタゲノムを解析した。新たに構築した47,548のメタゲノムアセンブルゲノムによって補完して、1,089の微生物種の株レベルの動態を定量化した。ドナー株のコロニー形成とレシピエント株のレジリエンスは臨床転帰とはほとんど無関係だったが、宿主、マイクロバイオーム、プロシージャ変数が説明されたラッソ正則化回帰モデルを使用することで正確な予測が可能となった。レシピエント側の因子および微生物コミュニティ全体から個々の株までを網羅するドナーとレシピエントの間の相補性が、株集団の動態の主要な決定要因であり、FMT後の腸内マイクロバイオームを形づくる基盤的過程についての知見が提供される。生態学を基盤とする枠組みを我々の知見に適用することにより、さらに効果的で標的を絞った将来のマイクロバイオーム療法の開発に情報を与える可能性のあるパラメーターが示され、臨床診療でドナー微生物相のコロニー形成あるいはレシピエントが持つ微生物の置き換えを増強するために患者の層別化がどのように使えるのかが示唆された。

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