腸内細菌相:さまざまな疾患にわたる糞便微生物相移植後の株の生着の多様性とマイクロバイオーム組成の予測可能性
Nature Medicine 28, 9 doi: 10.1038/s41591-022-01964-3
糞便微生物相移植(FMT)は再発するClostridioides difficile感染に対する有効性が非常に高く、他のマイクロバイオーム関連疾患にも有望な治療法と考えられているが、微生物の生着動態の包括的な理解の欠如が、十分な情報に基づいてこの方法を使うことの妨げとなっている。我々は、異なるタイプの8つの疾患について、ドナー、FMT実施前のレシピエント、FMT実施後のレシピエントからなる226の組から集められた、新規および公開されている糞便マイクロバイオームの統合ショットガンメタゲノムについて、系統的メタ解析を行った。メタゲノムについての改良された株プロファイリングを使って株の共有を推定することにより、ドナー株の生着率が高いレシピエントは、研究全体で評価した場合、FMT後に臨床的成功を経験する可能性が高いことが分かった(P=0.017)。全てのコホートを考慮すると、複数の経路(例えば、同じ治療の際にカプセルと大腸内視鏡の両方)からFMTを受けた参加者だけでなく、感染性疾患で抗生物質を投与されたレシピエントでも、非感染性疾患での抗生物質未使用患者に比べると生着率の上昇が認められた。バクテロイデス門の種およびアクチノバクテリア門の種〔ビフィドバクテリウム属(Bifidobacteria)を含む〕は、ファーミキューテス門よりも高い生着率を示した(ファーミキューテス門の特徴があまり明らかになっていない6種を除く)。クロスデータセットの機械学習から、FMT後のレシピエントでの種の存在の有無が、1つのデータセット抜き(leave-one-dataset-out)の評価で平均AUROC値が0.77と予測され、また、FMT後の種の存在の推定には、微生物の存在量、保有率、タクソンが関わっていることが明らかになった。我々の研究は、FMT後のマイクロバイオーム生着動態とその臨床変数との関連を調べることにより、種特異的な生着パターンを明らかにし、また、疾患を標的としたFMTプロトコルについてFMT後の特定のマイクロバイオーム特性を最適化する可能性のあるドナーを予測できる機械学習モデルを示している。