2型糖尿病:2型糖尿病の成人での完全に自動化されたクローズドループインスリン送達 ─ 非盲検・単一施設・無作為化クロスオーバー試験
Nature Medicine 29, 1 doi: 10.1038/s41591-022-02144-z
2型糖尿病の成人患者では、完全なクローズドループによるインスリン送達(食事のためのインスリンのボーラス投与を必要としない)の利点ははっきりしていない。本論文では、非盲検・単一施設・無作為化クロスオーバー試験で、2型糖尿病の成人26人(女性7人および男性19人、年齢〔平均 ± s.d.〕は59 ± 11歳、ベースライン時の糖化ヘモグロビン〔HbA1c〕は75 ± 15 mmol mol−1〔9.0% ± 1.4%〕)が、完全クローズドループアプリであるCamAPS HXと、グルコースセンサー(センサーグルコース値は知らされない)を装着する標準インスリン療法(対照)を無作為に決めた順序で8週間ずつ行って(2回の間のウォッシュアウト期間は2~4週間)比較した結果を報告する。主要評価項目は、目標グルコース範囲内(3.9~10.0 mmol l−1)にある時間の割合であった。解析はITT(intention to treat)によって行った。2020年12月16日から2021年11月24日の間に30人の参加者が集められ、そのうち28人が2つの群に無作為に割り付けられた(最初にクローズドループ治療を行う群に14人、最初に対照治療を行う群に14人)。目標グルコース範囲内の時間の割合(平均 ± s.d.)は、クローズドループ治療群で66.3% ± 14.9%であったのに対し、対照治療群では32.3% ± 24.7%であった(平均差:35.3パーセントポイント、95%信頼区間〔CI〕:28.0–42.6パーセントポイント、P < 0.001)。10.0 mmol l−1を超えた時間はクローズドループ治療群で33.2% ± 14.8%であったのに対し、対照治療群で67.0% ± 25.2%であった(平均差:−35.2パーセントポイント、95% CI:−42.8–−27.5パーセントポイント。P < 0.001)。平均グルコース値は、クローズドループ治療期間中が対照治療期間中よりも低かった(クローズドループ治療群9.2 ± 1.2 mmol l−1に対し対照治療群12.6 ± 3.0 mmol l-1。平均差、−3.6 mmol l−1。95% CI、−4.6–−2.5 mmol l−1。P < 0.001)。HbA1cは、クローズドループ治療後(57 ± 9 mmol mol−1〔7.3% ± 0.8%〕)の方が、対照治療後(72 ± 13 mmol mol−1〔8.7% ± 1.2%〕)よりも低かった(平均差:−15 mmol mol−1、95%CI:−20–−11 mmol l−1〔平均差:−1.4%、95%CI:−1.8–−1.0%〕、P < 0.001)。3.9 mmol l−1未満の時間は2つの治療群間で同様であった(クローズドループ治療期間中の中央値0.44%〔四分位範囲:0.19~0.81%〕に対して、対照治療期間中の中央値0.08%〔四分位範囲、0.00~1.05%〕、P = 0.43)。どちらの治療期間でも重度の低血糖事象は起こらなかった。クローズドループ治療期間中に、治療に関連した重篤な有害事象が1件起こった。完全なクローズドループインスリン送達は、標準インスリン療法と比較して、低血糖状態を増やすことなく血糖コントロールを改善し、また、2型糖尿病の成人で転帰を改善する安全で有効な方法となる可能性がある。この研究はClinicalTrials.govに登録されている(NCT04701424)。