感染症:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌菌血症に対するクロキサシリン単剤とホスホマイシン併用との比較 ─ 無作為化試験
Nature Medicine 29, 10 doi: 10.1038/s41591-023-02569-0
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症患者では、約25%の治療が失敗する。今回我々は、MSSA菌血症で入院した成人において、クロキサシリンとホスホマイシンの併用がクロキサシリン単剤よりも良好な治療成功を達成するかどうかを評価した。我々は、多施設非盲検無作為化第III–IV相優越性臨床試験を行った。最初の7日間、4時間ごとのクロキサシリン2 gの単剤静脈内投与か、それに加えて6時間ごとのホスホマイシン3 gの静脈内投与の併用に、患者を無作為に1:1に割り付けた。主要評価項目は7日目での治療成功とし、以下の基準との複合評価項目であった。すなわち、患者が生存あるいは安定しており、qSOFA(quick Sequential Organ Failure Assessment)スコアが改善されていること、発熱がなく、MSSAの血液培養が陰性であることとし、これらは治療の割り付けを知らされていない第三者委員会によって審査された。215人の患者が無作為化され、そのうちの105人はクロキサシリンとホスホマイシンの併用投与を受け、110人はクロキサシリンの単剤投与を受けた。少なくとも1日治療を受けた214人の患者で、主要評価項目の治療企図解析を行った。無作為化後7日目の治療成功は、単剤療法を受けた患者では110人のうち82人(74.5%)、併用療法を受けた患者では104人のうち83人(79.8%)で達成された(リスク差5.3%、95%信頼区間〔CI〕、−5.95~16.48)。死亡や有害事象などの副次評価項目は2つのグループで同様で、例外として、3日目でも持続していた菌血症は併用群の方が低頻度であった。事前指定した中間解析では、第三者委員会は募集の無益性を考慮し、計画されていた366人の患者の無作為化に対して募集中止を勧告した。MSSA菌血症においてクロキサシリンとホスホマイシンの併用は、クロキサシリン単剤に比べて、治療7日目での優れた治療成功を得ることはできなかった。今後の試験では、より個別化した方法を用いて感染の固有の不均一性を考慮すべきである。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT03959345。