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HIV:HIV-1中和の動態と持続性はウイルス複製によって決定される
Nature Medicine 29, 11 doi: 10.1038/s41591-023-02582-3
主要なHIVワクチン開発において目標となっているのは、感染を抑えるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)中和抗体(nAb)の使用である。しかし、nAbを誘導するワクチンはまだ利用可能でないため、ヒトにおけるnAb応答の動態や持続性についての情報を得るためには、広域かつ強力なnAbを自然に産生するHIV-1感染者(「HIV-1ニュートラライザー」)由来のデータを利用するしかない。こういった知識は、将来的なHIV-1ワクチン療法の設計において極めて重要となる。この課題を解決するために我々は、抗レトロウイルス療法(ART)治療中あるいは治療中断中のHIV-1感染者2354人のHIV-1中和免疫グロブリンG(IgG)を評価した。非クレードBウイルスの感染、CD4+ T細胞数が200 μl−1未満であること、ARTの治療中断、長期のART治療中断といったことが、より強力で広域な中和を予測する独立した因子であった。縦断的解析により明らかになったnAbの半減期は、ウイルス血症でない人が9.3年、ウイルス血症が低レベルの人では16.9年、新たにARTを開始した人では4.0年であった。また、強力なHIV-1ニュートラライザーでは、ART開始後に血清nAbやnAbをコードする記憶B細胞の画分が減少することが分かり、これは抗原消失後の血清の中和活性の減少が、nAbレベルの低下によることを示唆している。以上の結果をまとめると、HIV-1中和応答は、抗原レベルが低くても数年間持続可能であり、HIV-1ワクチンが持続性のnAb応答を誘導し得ることを示唆している。