腸内細菌:造血幹細胞移植患者の腸内細菌代謝を変化させる食餌介入の実現可能性
Nature Medicine 29, 11 doi: 10.1038/s41591-023-02587-y
同種の造血幹細胞移植(HCT)後に行われる食餌介入が、消化管の微生物相と代謝物にどのような影響を及ぼすかの評価は十分には行われていない。我々は、2段階からなる試験の第1段階としてフィージビリティ試験を実施した。10人の成人がHCTの7日前からHCT後100日目まで毎日、ジャガイモ由来のレジスタントスターチ(難消化性デンプン〔RPS〕)を摂取した。今回の研究の主要目的は、RPS使用の実現可能性と、腸のマイクロバイオームおよび短鎖脂肪酸である酪酸を含む代謝物へのRPSの影響を検討することであった。60%以上の被験者において、70%以上の用量が遵守されるという事前設定目標が達成され、実現可能性が認められた。また、被験者のRPS摂取時における糞便中酪酸レベルは、未摂取時よりも有意に高かった(P < 0.0001)。探索的な目的は、血漿代謝物を評価することであった。血漿代謝物については、ベースライン時と比較して長期にわたる変化が認められたが(P < 0.0001)、RPSとは無関係であった。しかし、主要血漿代謝物は、RPSを摂取したレシピエントでは、既存対照よりも安定しており、また、この2群間には生着時に血漿代謝物に有意差が見られた(P < 0.05)。これらの結果は、同種HCTレシピエントにおいてRPSが実際に使用可能であることを示している。本研究では、RPSは腸および血漿における代謝物の有意な変化と関連していた。現在、同種HCTレシピエントにおける移植片対宿主病に対するRPSの影響を検討する第2相試験が進行中である。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT02763033。