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ディスバイオーシス:急性呼吸不全および院内肺炎における気道マイクロバイオームのロバストなシグネチャー

Nature Medicine 29, 11 doi: 10.1038/s41591-023-02617-9

呼吸器微生物相のディスバイオーシスは、重症患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および院内肺炎(HAP)と関連している。しかし、再現性のある呼吸器マイクロバイオームシグネチャーは得られていないため、これらの疾患や可能性のある治療法への理解を深めることができない。本論文では、公開された17の研究に基づく1029人の重症患者(21.7%がARDS患者、26.3%がHAP患者)の呼吸器から収集した2177の検体と、対照健常者からの327の検体について、16S rRNA塩基配列解読データを解析した。データハーモナイゼーションや個々の患者データのプーリングを行った後、ARDS、HAP、長期人工呼吸器使用と関連する微生物相シグネチャーを特定した。HAPや長期人工呼吸器使用の微生物相シグネチャーでは、健常者の呼吸器検体に典型的な微生物コアグループの減少という特徴が見られた。ARDSの微生物相シグネチャーは、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌やブドウ球菌(Staphylococcus)属細菌をはじめとする、病原性を持つ可能性がある呼吸器微生物の増加により他と区別される。機械学習モデルを用いて、ARDS、HAP、長期人工呼吸器使用を比較的高い精度(曲線下面積はそれぞれ0.751、0.72、0.727)で予測する、3因子または4因子からなる臨床的に有益なシグネチャーを特定した。次に、人工呼吸器を使用した患者136人からなる独立の前向きコホートで、これらのシグネチャーの妥当性を検証した。また、ARDS、HAP、長期人工呼吸器使用に関連するマイクロバイオームシグネチャーを示す患者では、これらのシグネチャーが見られない患者に比べて、気管チューブをうまく抜去するのに時間がかかることが分かり、ハザード比はそれぞれ1.56(95%信頼区間〔CI〕1.07~2.27)、1.51(95%CI 1.02~2.23)、1.50(95%CI 1.03~2.18)だった。まとめると本研究では、ARDSやHAPに関連するロバストな呼吸器マイクロバイオームシグネチャーの定義付けと検証を行った。これらのシグネチャーは、重症患者に対するマイクロバイオームの治療的調節における有望な標的を見つけるのに役立つだろう。

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