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生体計測:生理的状態の継続的なモニタリングのためのワイヤレス広帯域音響-機械的センシングシステム
Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02637-5
人体は、心肺や胃腸の健康状態についての情報を含んだ、微細な広帯域音響-機械的信号をさまざまな形で生成しており、こうした信号は生理的状態の継続的なモニタリングに利用できる可能性がある。既存のデバイスには、デジタル聴診器から慣性計測装置まで多岐にわたる選択肢があり、有用な機能が利用できるが、測定場所の制限などの短所があるために連続的な長期的追跡が妨げられ、これらのデバイスの使用は管理された環境に限定される。本論文では、これらの制限を回避し、体内のゆっくりした動き、消化活動、呼吸音、心周期などの過程についての情報を、いずれも臨床で使える精度で、周囲音によるアーチファクトとは独立に提供できるワイヤレス広帯域音響-機械的センシングネットワークを紹介する。このシステムは、胃腸活動の動態や肺に出入りする気流の動態について時空間マッピングを行うこともできる。このシステムの性能を実証するために、我々はこのシステムを用いて、新生児集中治療室の新生児(n = 15)における呼吸流量低下や腸運動低下のモニタリング、および胸部外科手術を受けた患者(n = 55)における局所肺機能の評価を行った。この広帯域音響-機械的センシングシステムは、臨床環境と非臨床環境の両方で、生理的信号を継続的にモニタリングすることによって、患者の心肺機能の不安定性を軽減し、疾患の進行を管理するのに役立つ可能性を秘めている。