膵臓がん/AI支援型診断:単純CTと深層学習による膵臓がんの大規模検出
Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02640-w
膵管腺がん(PDAC)は最も致命的な固形悪性腫瘍であり、通常は、手術できない後期の段階で検出される。PDACが早期または偶発的に発見された症例は生存期間の延長との関連が示されているが、症状が認められないPDAC患者のスクリーニングを1種類の検査だけで行うことは実現できていない。この理由は、PDACの有病率は低く、検出結果が偽陽性となる不利益が生じ得るためである。臨床的な適応に対して日常的に実施されている単純コンピューター断層撮影(CT)は、大規模なスクリーニング手法となり得る可能性があるが、単純CTでPDACを見つけることは長らく不可能とされてきた。今回我々は、単純CTを用いて膵臓病変を高精度で検出および分類できる深層学習手法であるPANDA(pancreatic cancer detection with artificial intelligence)を開発した。まずPANDAは、1施設の患者3208人の単純CT画像のデータセットで訓練された。10施設の患者6239人を含む多施設検証でPANDAを用いると、病変検出については受信者動作特性曲線下面積(AUC)0.986〜0.996を達成し、PDACの特定については、放射線科専門医の平均値に比べて、感度で34.1%、特異度で6.3%上回った。さらに、治療継続患者2万530人からなる複数の実臨床状況・環境での検証において、病変検出の感度は92.9%、特異度は99.9%を達成した。特筆すべきは、単純CT画像を活用したPANDAは、一般的な膵臓病変サブタイプを鑑別するに当たって、(造影CTの)読影レポートに対して非劣性であることが明らかになったことである。PANDAは、大規模な膵臓がんスクリーニングの新たなツールとなる可能性がある。