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神経科学:脳脊髄液中の損傷特異的因子はヒト脳でのアストロサイトの可塑性を調節する

Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02644-6

グリア環境は神経疾患の進行に影響を与えるが、現在のところ、その知見の多く、特にアストロサイトの不均一性についての知見は、前臨床動物モデルに依存している。外傷性脳損傷のマウスモデルでは、増殖する反応性アストロサイトが疾患転帰に対して有益な機能を担っていることが明らかにされているが、これらの細胞がヒトにおいて脳病変内に存在するかどうか、またどのような場合に存在するかについては、ほとんど分かっていない。今回我々は、頭蓋内出血のある場合とない場合の両方を対象に広範囲にわたる病変を調べ、血液脳関門の破綻を伴う病変とアストロサイトの増殖の間に顕著な相関を見いだした。この結果は、神経幹細胞の能力を調べるアッセイでさらに裏付けられた。最も重要なことは、プロテオーム解析によって、これらのアストロサイトの可塑性を調節する重要なシグナル伝達経路が明らかになったことであり、それによって増殖性アストロサイトの新規マーカーとしてGALECTIN3を、また、アストロサイト増殖とニューロスフェア形成を仲介する機能的ハブとしてGALECTIN3結合タンパク質であるLGALS3BPを同定することができた。まとめると、本研究は、ヒトの大脳皮質に影響を与えるさまざまな病理において、治療に関連するアストロサイト応答とそれらの調節分子を明らかにしている。

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