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流産:妊娠第1三半期の自然妊娠損失における染色体変化の保有率
Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02645-5
妊娠損失は多くの場合、受胎産物(POC)における染色体異常によって引き起こされる。子宮内の発生過程におけるこれらの異常の保有率と、胚細胞系譜および胎盤細胞系譜での異常・正常細胞の割合は明らかになっていない。本論文では、1745例の自然妊娠損失を解析し、POCの約半数(50.4%)で核型異常が見られ、母親の年齢と父親の年齢が独立にゲノム異常の割合の上昇に関与していることを報告する。両親およびPOCの核型が正常な妊娠損失94例からなるサブセットにgenome haplarithmisis(ゲノムの遺伝子型判定データからハプロタイプとコピー数を同時に得る方法)を適用した。両親のDNAに加え、POCの胚組織の代表として胚体外中胚葉の、栄養膜組織の代表として絨毛膜絨毛のDNAを用いて遺伝子型判定を行うことで、POCの両細胞系譜に含まれるゲノムの特徴の全容が明らかになった。これらの妊娠損失の35.1%で、これまでに核型分析で検出されたことのない染色体異常が見られたことから、妊娠損失での染色体異常の割合は、外挿法によって67.8%に上昇した。生存可能な妊娠で見られる染色体異常モザイクは、胎盤のみのモザイクのように絨毛膜絨毛に限定されることが多いが、それに対して妊娠損失では、絨毛膜絨毛よりも胚体外中胚葉において染色体不均衡のモザイクが高度に見られることが分かった。我々の結果は、妊娠損失におけるゲノム異常について完全な対立遺伝子構造を把握することが、妊娠損失という深刻な状態の臨床管理と基礎研究を改善するために重要であることを強調している。